熊本地震、片付ける前に住まいを撮る 罹災証明へ「全景→寄り」の記録術
被災後は片付けを急ぎたくなるが、現場が変わる前の写真は住家被害認定や保険手続きの助けになる。安全を最優先に、外観、部屋の全景、損傷の寄り、尺度を順序立てて残す。

令和8年熊本地震では、住家被害の確認と生活再建支援が並行して進んでいる。内閣府は7月30日、熊本県への「被災者支援統括調整官」の派遣を公表し、31日には八代市と氷川町へ行政書士を派遣して相談対応を支えると発表した。熊本県の案内にも、屋根の被害拡大を防ぐ緊急修理や賃貸型応急住宅などの情報が加わった。ただし、受付時期、対象、必要書類は制度や市町村によって異なる。
こうした手続きに入る前に、被災した家庭が安全を確保したうえでできる重要な作業がある。片付けや修理で現場が変わる前に、住まいの被害を写真で残すことだ。写真は罹災証明書の判定そのものではないが、市町村の住家被害認定調査、保険会社への説明、後日の確認に役立つ基礎記録になる。
撮影は「全景→寄り→尺度」の順で
最優先は身の安全だ。倒壊や落下、火災、漏電などのおそれがある建物には入らず、自治体や消防などの案内に従う。撮影は安全が確保できる範囲に限り、避難や応急措置を遅らせない。安全を確認できたら、次の順序で残すと被害箇所と住宅全体の関係を後から読み取りやすい。
- 家の外観をなるべく4方向から撮る。建物全体と周囲の状況が一枚に入る距離から始め、屋根、外壁、基礎、窓など、見える損傷を一方向だけで済ませない。
- 被災した部屋ごとに全景を撮る。室内のどこが傷んだのか分かるよう、入口付近などから部屋全体を記録する。片付け前の家具や家電の位置も状況説明になる。
- 損傷箇所へ寄る。ひび、浮き、破損、ずれなどを近くから撮る。ただし、寄りだけでは場所が分からなくなるため、同じ箇所を少し引いた写真と組にする。
- 大きさが分かる手掛かりを添える。安全に置ける場合はメジャーなどを写し込み、「引き」と目盛りが読める「寄り」を分ける。浸水がある場合は高さも同じ考え方で残す。
- 住宅設備と家財も分けて記録する。キッチン、洗面台、便器、浴室、家電のほか、自動車、物置、農機具など、被害を受けたものを漏れなく撮る。
- 撮影順とデータを保つ。スマートフォンの日時設定を確認し、外観、部屋、損傷箇所の順をそろえる。端末の故障に備え、安全な場所でクラウドや別媒体へ複製する。
内閣府は、調査前に除去、修理、片付けをすると被害箇所の確認が難しくなるため、可能な限り事前に撮影して保存するよう周知している。すでに片付けを始めた場合も、残っている被害と作業途中を記録し、市町村と保険会社へ事情を伝える。撮り直すために危険な場所へ戻る必要はない。
写真を撮った後の三つの連絡先
第一は住んでいる市町村だ。罹災証明書は住宅の被害程度を証明するもので、申請後に市町村職員による被害認定調査が行われ、その結果に基づいて交付される。写真だけで判定が決まるわけではなく、申請方法や必要書類も自治体に確認する。
第二は加入している損害保険会社または代理店。修理や処分を進める前に連絡し、必要な写真、現地確認、見積書の扱いを確かめたい。保険証券が見当たらなくても、契約先に再発行を相談できる。
第三は修理契約の相談先だ。災害後は「保険金で無料になる」などと急がせる勧誘が起きやすい。公的支援を名乗ってもその場で契約せず、事業者名、工事範囲、自己負担を自治体や保険会社に照合する。不審な勧誘は消費者ホットライン188に相談できる。
撮影データには住宅の外観、室内、家財など私生活に関わる情報が含まれる。手続きに必要な相手へ直接渡し、住所や位置情報が分かる画像をSNSへ不用意に公開しない。家族と共有する場合も、閲覧できる人と保存先を確認しておきたい。
今回の記録は熊本の被災世帯に限らない。スマートフォンの充電、メジャー、連絡先一覧を防災用品と一緒にしておけば、次の災害で「片付ける前に撮る」という一手を迷わず実行しやすい。急ぐのは撤去ではなく、安全の確保と、現場が変わる前の事実の保存である。
編集部注。 この記事は一般的な災害後の記録と手続きの案内です。建物の安全判断、被害認定、保険金、公的支援の対象は、自治体、消防、保険会社などの個別案内を確認してください。
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