つみたて投資枠は360本 「低い信託報酬」の次に見る3項目
金融庁は7月24日、一部の全世界株式型インデックス投信で、低い信託報酬とは別に米国源泉税がリターンを押し下げる構造を指摘した。NISAの商品を購入・点検するときの比較手順を整理する。

金融庁が2026年7月24日に更新した資料によると、NISAのつみたて投資枠で買える商品は360本になった。指定インデックス投信の信託報酬は、投資先が国内の商品の平均が年0.27%、内外・海外の商品の平均が年0.34%で、いずれも税抜きだ。低い継続費用は長期投資で重要だが、一覧の最小値だけを探せば比較が終わるわけではない。
同じ日に公表された金融庁の「資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポート2026」は、表面上の信託報酬からは把握しにくいコスト構造を取り上げた。対象商品を名指しして買い替えを求める資料ではない。むしろ、商品を選ぶ側が「何に投資するか」に加え、「どの経路で投資するか」と「結果が指数からどれだけ離れたか」を見る必要を示している。
360本は、同じ競技の360商品ではない
つみたて投資枠には、国内株式、海外株式、複数資産を組み合わせた投信、ETFが含まれる。値動きの基準となる指数、株式と債券の比率、為替ヘッジの有無が違えば、信託報酬だけを横一列に並べても意味のある比較にはならない。まず投資対象と連動を目指す指数をそろえ、その中で費用と運用結果を見るのが順序だ。
対象商品であることは、長期・積立・分散投資に適した商品として法令上の要件を満たしたという入口であり、元本や将来の収益を保証する認定ではない。金融機関ごとに取扱商品も異なる。金融庁の一覧で正式名称を確認した後、自分の口座で買えるかを販売会社の画面で照合する必要がある。
低い信託報酬の外側で起きる差
レポートが例示したのは、米国籍ETFを組み入れて運用する一部の全世界株式型インデックス投信だ。組入れETFの分まで含めた実質的な信託報酬は年0.1022~0.178%と低い一方、複数のファンドでベンチマークを3年間で約2%、設定来で約15%下回っていた。これは年率の手数料ではなく、それぞれの期間を通じた運用結果の乖離として読むべき数字だ。
金融庁は要因の一つに、米国籍ETFの分配金へ米国でかかる10%の源泉税を挙げる。ETFが米国外の株式から受ける配当では、現地課税に加えてETFの分配時にも米国で課税され、再投資に回る金額が減る場合がある。運用会社の要因分析では、この源泉課税がベンチマークとの差の約40~50%を占めた例もあったという。
この影響は投資家が直接支払う販売手数料ではなく、投信内部の運用経路で基準価額に反映される。レポートによると、該当する構造的な税負担は交付目論見書で説明されず、総経費率にも含まれていなかった。したがって「信託報酬」と「総経費率」を見れば、あらゆる負担を足し終えたことになるとは限らない。
購入前後に確認する3項目
- 投資経路:交付目論見書の「ファンドの目的・特色」「投資対象」を読み、株式を直接組み入れるのか、別のETFや投信を介するファンド・オブ・ファンズ型なのかを確認する。
- 実質コスト:信託報酬だけでなく、最新の運用報告書にある総経費率と内訳を見る。数値に含まれない税や取引上の要因が説明されているかも確認する。
- 指数との差:月次レポートで、同じ期間のファンド騰落率と配当込みベンチマークを比べる。1か月の上下ではなく、1年、3年、設定来など複数期間で、差が継続しているかを見る。
配当込みの比較かを確かめる
株式投信は受け取った配当を再投資するため、比較対象も原則として配当込み指数が適切だ。金融庁は、配当抜き指数と比べて実績を良く見せかねない事例や、好調なときだけ参考指数を載せ、不調時には載せない事例も指摘した。比較する指数の名称、配当込みかどうか、開始日が途中で変わっていないかを月次レポートで見る。
NISAの非課税と、投信内部の税は別の層
NISAは、口座で得た売却益や配当・分配金に通常かかる日本の約20%の税を非課税にする制度だ。一方、今回示されたのは、投資信託が海外資産へ投資する途中で生じ、投資家に届く前の基準価額へ影響する負担である。「NISAだから投信内部の海外課税もすべてなくなる」とは考えない方がよい。
2025年12月末のNISA口座は2,821万、累計買付額は71兆円に達した。利用が広がるほど、商品を買った後の点検も重要になる。ただし、短期の指数乖離だけで直ちに売ると、相場、為替、売買コストなど別の要因を取り違えるおそれがある。差が長く続き、資料で理由が分からない場合は、運用会社や販売会社の説明を確認する。
360本という選択肢は、最低の信託報酬を競う一つの順位表ではない。投資対象をそろえ、投資経路を読み、総経費率を確認し、配当込み指数との差を追う。低コストを入口にしながら、その先で実際に残った運用結果まで見ることが、NISAの長期枠を丁寧に使うための比較になる。
編集部注。 この記事は一般的な制度・投資信託情報で、特定商品の推奨や個別の投資助言ではありません。投資には元本割れや為替変動などのリスクがあります。商品の最新の目論見書、運用報告書、販売会社の情報を確認し、自身の目的と許容できるリスクに照らして判断してください。
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