SMS付きデータSIM、本人確認の対象へ 「5回線」は一律禁止ではない
総務省は8月3日、改正法の施行に向けた制度整備の方向性を公表した。対象はSMS機能付きデータ通信専用SIMが中心。本人確認の拡大、原則5回線、法人契約の準備を、まだ決まっていない点と分けて読む。

総務省は2026年8月3日、携帯電話不正利用防止法の改正を実施するための「制度整備の方向性」を公表した。改正法は5月22日に成立し、29日に公布されたが、8月3日から新しい本人確認が一斉に始まったわけではない。施行は公布から1年以内の政令で定める日で、具体的な対象や運用は今後の総務省令、Q&A、携帯通信事業者の案内へ落とし込まれる。
今回の資料を「すべてのデータSIMに今すぐ本人確認」「個人は5回線まで」と要約すると、二つとも言い過ぎになる。読者が確かめるべき線は、SMS機能の有無、正当な利用用途、契約者と実際の利用者の関係である。
対象の中心は、SMS機能付きデータSIM
方向性は、通話用の電話番号を使わないデータ通信専用SIMのうち、SMS機能が付いたものを本人確認義務などの対象とする。SMSはメッセージアプリや金融サービスなどのアカウント認証に使えるためだ。一方、SMS機能のないデータ通信専用SIMは、利便性への影響と現時点の不正利用リスクを考慮し、対象外とするのが適当だと整理した。
「IoT向け」と書かれていれば自動的に例外になるわけでもない。SMSの送信先が技術的に限定される、閉域網や特定サーバーにしか接続できない、SIMを差し替えて使えないなど、用途に応じた機能・利用方法の制限があり、不正利用のおそれが低いサービスは、SMS機能があっても対象外とする方向だ。単なる商品名やパッケージ表示だけは、制限として想定していない。
背景には実際の悪用がある。警察庁が2024年9月から2025年5月までの特殊詐欺事件などの捜査で確認した不正利用データSIMは708枚。このうちSMS機能付きは458枚、SMSなしは87枚、種別不明は163枚だった。SMS付き458枚では、本人確認なしが379枚、本人確認ありが23枚、不明が56枚だった。ただし、これは捜査で確認された事例の内訳で、市場全体の不正利用率や、本人確認だけで犯罪を防げる割合を示す統計ではない。
「5回線」は上限ではなく、追加確認の基準
多回線契約については、正当な利用用途を確認できなかった場合、音声SIMとSMS機能付きデータSIMでそれぞれ5回線を基準とし、それを超える部分の提供を事業者が拒めるようにする方向が示された。6回線目を持つこと自体を違法にしたり、既存回線を直ちに止めたりする一律禁止ではない。条文上も対象は、その携帯通信事業者との契約で同時に利用できる端末設備の数である。
家族を代表して契約し利用者登録を適切に行う場合は、正当な用途を確認できた例として扱うのが適当だとされた。個人事業主の業務利用やスマートウォッチなどについても、総務省が主要事例を整理し、必要に応じてQ&Aで示す方針だ。複数回線が必要な人は急いで解約せず、「誰が、どの端末で、何のために使うか」を一覧にし、契約先が求める登録・説明方法を待ちたい。
法人契約は、名刺だけでは足りなくなる
法人名義などで、契約担当者と契約名義人が異なる場合は、担当者本人の確認に加え、契約する権限や地位の確認も義務付けられる。方向性が認める方法には、代表権の登記、委任状または類似書類、法人の営業所などへの電話、既存の取引関係から権限が明らかな場合などが含まれる。名刺や社員証だけでは、偽造可能性があり契約権限を証明しないとして、確認方法に認めないのが適当だとした。
同じ法人と同じ担当者による追加回線で、双方の本人確認が適切に済み、初回と同一だと確認できる場合は、権限・地位の再確認を不要とする方向も示されている。会社は契約担当者、承認者、委任状の保管場所を決め、回線台帳に実利用者と用途を結び付けておくと、施行後の確認に対応しやすい。
今やること、まだ待つこと
- 個人:新しくデータSIMを選ぶときは、SMS機能の有無と本人確認方法を商品ページで確認する。低価格や「データ専用」という名称だけで本人確認不要と決めつけない。
- 複数回線の利用者:契約先ごとに音声、SMS付きデータ、SMSなしを分け、家族を含む実利用者と用途を記録する。追加契約時は事業者の最新案内を見る。
- 法人・個人事業主:契約名義、担当者の権限、委任書類、端末の実利用者を台帳へつなぐ。名刺や社員証だけを前提にしない。
- 全利用者:施行日、省令の例外、既存契約の再確認、使える本人確認書類はまだ最終案内を待つ。非公式な「今すぐ更新しないとSIM停止」という連絡から手続きしない。
改正は、本人確認のないSMS付きSIMを使ってアカウントを大量に作ることを難しくし、捜査時に契約者へたどる手掛かりを増やす狙いがある。しかし、SNSアカウントの開設時に全利用者へ実名確認を義務付ける制度ではなく、詐欺対策がSIMだけで完結するわけでもない。今回決まったのは法律の枠と制度整備の方向である。SMS、回線数、利用者を分けて整理し、最終的な省令と契約先の正式案内を確認することが、過剰反応せず準備するための現実的な順序になる。
編集部注。 この記事は2026年8月3日時点の公表資料に基づく一般的な制度解説です。施行日、対象サービス、本人確認方法、回線数の判断、既存契約や法人契約の手続きは、公布される政省令と契約する携帯通信事業者の正式案内を確認してください。
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