サイバー被害、警察へ早めに相談 「通報・相談・情報提供」を分ける
警察庁が8月20日に呼びかけ。全国統一のオンライン窓口は目的別に三つある。緊急時や被害届との違い、ランサムウェア端末を切り離す際の注意、相談前に残す記録を整理する。

警察庁は8月20日、サイバー事案について「警察への通報・相談を躊躇しないで」とするサイバー警察局便りを公表した。会社のパソコンがランサムウェアに感染した疑い、突然の偽警告から電子マネーを求められたケース、取引先を装うメールで認証情報を入力したケースを例に、速やかな連絡を求めている。
警察の役割は、発生した事件の捜査だけではない。今回の案内は、被害拡大を防ぐための情報提供や助言、官民連携による教育、攻撃を想定した訓練も挙げる。ただし、窓口を送信すれば被害回復や返金が保証されるわけではない。まず緊急性と目的を切り分けることが、適切な初動になる。
最初に「緊急」「被害届」「オンライン」を分ける
爆破・殺人・自殺予告など人命に関わる事案は、最寄りの警察署へ通報し、緊急を要する場合は110番を使う。オンライン窓口の入力を優先する場面ではない。また、被害届を出す場合は、警察庁が最寄りの警察署などへ連絡するよう案内している。
それ以外のサイバー事案には、全国統一のオンライン受付窓口がある。居住する都道府県の警察本部や管轄署を選ぶと、入力内容が選択先へ通知される。オンラインで完結する一般相談の箱というより、地域の警察へ内容をつなぐ入口と捉えると分かりやすい。
三つの入口は「何を求めるか」で選ぶ
警察庁の定義では、「通報」は具体的な被害事実を伴う通知、「相談」は対応についての助言を求めるもの、「情報提供」はサイバー事案に関する手掛かりを伝えるものだ。名前の重さで選ぶのではなく、起きた事実と求める対応で判断する。
例えば、偽サイトへ認証情報を入力したが不正利用はまだ確認できないときは、状況と不安点を整理して相談する。身に覚えのない送金やアカウント操作が確認できたなら、金融機関やサービス事業者へ停止を依頼すると同時に、具体的な被害事実を警察へ伝える。第三者への攻撃を示す不審な情報を見つけた場合は、情報提供が候補になる。迷う場合も、事実を小さく見せたり、被害を推測で大きくしたりせず、確認できた範囲をそのまま伝えたい。
送る前に「時系列」と「残っているもの」をまとめる
IPAの情報セキュリティ安心相談窓口は、技術相談の前に、端末の種類とOS、セキュリティ製品やクラウドサービス、時系列を含む具体的な事象、ウイルスや不正アクセスと考えた根拠、ほかに相談した機関を整理するよう求めている。この項目は警察へ状況を説明する際にも役立つ。
最低限、①最初に異変へ気づいた時刻、②対象の端末・アカウント・サービス、③表示された内容と自分が行った操作、④送金やカード決済の有無、⑤残っている画面、メール、URL、通信・アクセスログをメモする。スクリーンショットは全画面と必要部分を分け、元メールは差出人やヘッダーを含む形で残す。不審な添付ファイルを証拠確認のために開き直す必要はない。
サポート詐欺では、警察庁は偽警告画面、インストールしたソフトが分かる資料、カード利用履歴や電子マネーのカードを保存するよう案内する。支払いがあれば、警察への相談を待たず、カード会社や電子マネー管理会社にも停止を依頼する。
ランサムウェアは「切断」と「電源断」が別
ランサムウェア感染が疑われるパソコンについて、警察庁はLANケーブルを抜く、無線をオフにするなどしてネットワークから隔離するよう示す。一方、電源を落とすと調査に必要なログなどが失われる場合があるため、電源は落とさないとしている。「止める」と聞いて電源ボタンを押すのではなく、通信の遮断と機器の状態維持を分ける必要がある。
これはランサムウェアを想定した一般的な初動で、すべての機器障害へ一律に当てはめるものではない。組織では社内のインシデント対応手順と担当者を優先し、安全や基幹業務への影響も伝える。警察庁は、通報によって被害公表を求めることはなく、復旧や業務継続へ配慮して捜査すると説明している。発生直後はログ保存だけを依頼し、後で詳しい状況を聞く場合もあるという。
IPAと警察は代替関係ではない
IPAの安心相談窓口は、主にウイルスや不正アクセスについて一般向けの技術的助言を行う。個別端末やログの調査、法的判断、通報の仲介、事件捜査は受け付けない。技術的にどう切り分けるかはIPA、具体的な被害の通報や捜査は警察、支払い停止は金融機関や決済事業者というように、必要なら並行して連絡する。
早期相談の要点は、完璧な報告書を作ってから動くことではない。人命に関わる緊急性を先に判断し、確認できた事実と時系列を残し、求める支援に合う窓口へつなぐ。分からない点は分からないまま明示する。その方が、推測で端末を操作して記録を失うより、次の判断に使える情報を保てる。
編集部注。 本稿は2026年8月25日06:59 UTC時点の警察庁・IPA公表資料に基づく一般的な初動整理です。人命に関わる緊急事案は110番、被害届は最寄りの警察署へ連絡してください。端末操作、証拠保全、支払い停止、届出は事案と組織の手順で異なるため、警察、所属組織の担当者、金融機関・サービス事業者、専門家の最新案内を確認してください。
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