暗い小惑星にC型とX型の中間 2天体の光が示す太陽系初期
JAXA宇宙科学研究所などのチームは、フレダとアバストゥマニが二つの分類の特徴を併せ持つと報告した。表面鉱物と共通の母天体という仮説、まだ断定できない点を整理する。

小惑星を光の反射特性で分ける「C型」と「X型」の間に、明瞭な境界ではなく連続帯がある可能性が浮かんだ。JAXA宇宙科学研究所(ISAS)などの国際研究チームは、小惑星1093 Freda(フレダ)と1390 Abastumani(アバストゥマニ)が、二つの型の特徴を同時に示すと報告した。ISASは7月21日に研究解説を公開し、論文は6月10日付で英国王立天文学会月報のレターに掲載された。
これは新しい天体が地球へ接近したというニュースではない。探査機が表面を撮影した結果でもなく、地上望遠鏡で受けた光を波長ごとに分け、表面の組成と成り立ちを探る分光研究である。重要なのは、分類名を一つ増やしたことより、太陽系初期の小天体が同じ材料と歴史から枝分かれした可能性を示した点だ。
「色」ではなく、波長ごとの反射を見る
研究対象は、可視光の幾何アルベドが0.1未満の暗いメインベルト小惑星だ。一般にC型は、可視光で反射率がほぼ平らか長い波長ほど下がる傾向を持ち、近赤外の1.0~1.3マイクロメートル付近に浅い吸収が見られる。はやぶさ2が試料を持ち帰ったリュウグウもC型に分類される。一方、低アルベドのX型は長い波長ほど反射が強くなる正の勾配を示し、この浅い吸収を通常は持たない。
フレダとアバストゥマニは、この教科書的な組み合わせから外れた。可視光から近赤外にかけては暗いX型のような正の勾配を示すのに、近赤外にはC型を思わせる浅い吸収帯もある。研究チームはハワイ・マウナケアのNASA赤外線望遠鏡施設で、SpeX分光器を使って0.8~2.5マイクロメートルの光を観測した。SpeXは天体を拡大して地形を写すカメラではなく、届いた光の強さを波長ごとに測る装置だ。
偶然見つけた2天体を、文献の約10個へ広げる
チームが進めていたのは、太陽系形成初期の微惑星の生き残りと考えられる、直径およそ100km以上の小惑星の組成調査だった。二つの中間的な天体は、その観測の途中で偶然見つかった。さらに既存の可視・近赤外データを調べると、同じような特徴を持つ100km級の天体が約10個あることが分かったという。単発の測定異常ではなく、C型と暗いX型をつなぐ集団かもしれないという議論は、ここから生まれる。
ただし「約10個」は、新しい分類として全てが確定した数ではない。論文は、異なる望遠鏡や時期のデータも組み合わせて候補を比較している。天体表面の場所による違い、観測時の条件、分類法による境界の動きも検討が必要だ。今後、同じ天体を複数の波長域と回転位相で測れば、中間的な特徴が表面全体に共通するのかを絞り込める。
クロンステダイトは「検出済み」ではない
研究チームは、観測された吸収を説明する表面物質として、鉄を含むケイ酸塩鉱物のクロンステダイトが、磁赤鉄鉱や極細粒の磁鉄鉱より整合しやすいとみる。クロンステダイトは、水と岩石の反応で変質した炭素質隕石に含まれる鉱物だ。だが、望遠鏡のスペクトルだけで表面の鉱物を採取・同定したわけではない。「クロンステダイトで構成される可能性が高い」というモデルと、地球へ持ち帰った試料の分析結果は分けて読む必要がある。
論文が提案するのは、始原的な母天体の内部で水質変成と部分的な分化が進み、層ごとに少しずつ異なる組成ができたという筋書きだ。その母天体が衝突で壊れれば、共通の起源を持ちながらC型寄り、X型寄り、中間的という異なる反射特性の破片が残り得る。地球でまだ確認されていない、変成の程度が比較的低いCI2コンドライトに対応する可能性も示されたが、これも現段階では仮説である。
次の探査先を決めるとき、分類名だけでは足りない
小惑星のスペクトル分類は、遠くから多数の天体を比較し、探査候補を選ぶための有効な地図になる。しかし今回の研究は、同じ分類名でも内部史が一様とは限らず、別の分類同士でも材料を共有し得ることを示す。探査計画では、可視光の傾きだけでなく、近赤外の浅い吸収、アルベド、天体の大きさや軌道を組み合わせて候補を評価する必要がある。
リュウグウやベヌーの試料分析が、望遠鏡のスペクトルと実物の鉱物を結び直したように、中間的な天体の由来を確かめる決定打も最終的には接近観測や試料にある。今の結論は「C型とX型の区別が無意味」ではない。二つの箱の間に、これまで見落としていた連続性がある。その細い橋を確認したことが、今回の発見の価値だ。
編集部注。 研究結果は望遠鏡による分光観測と既存データの解析に基づきます。表面鉱物、母天体の内部構造、隕石との対応は今後の観測や試料分析で検証される仮説を含みます。
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