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VERTECSが本格観測へ 初画像が示すこと、まだ示さないこと

6Uの超小型衛星は、35mm望遠鏡と4バンドの観測装置が軌道上で所定の性能を発揮すると確認した。公開画像は重要な節目だが、未知の背景光の起源を解いた結果ではない。

4色の広視野観測を表す小型衛星VERTECSの概念模型
小さな望遠鏡と4バンドの広視野で淡い宇宙背景光を測るVERTECSの仕組みを概念的に表現した。実機写真や観測画像ではない。 AI生成画像

超小型天文衛星「VERTECS(ヴァーテックス)」が初期運用を終え、本格的な天文観測を行う定常運用に入った。JAXA宇宙科学研究所と代表機関の九州工業大学が9月4日に発表した。6月12日にH3ロケット6号機で打ち上げられてから、電源、通信、姿勢制御、データ処理、観測装置を順に確かめてきた。

今回の節目は、「衛星と望遠鏡が軌道上で観測を続けられる見通しが立った」という運用上の確認だ。一方、VERTECSが目指す宇宙可視光背景放射の未知成分について、起源を突き止めたという発表ではない。公開された初画像が何を示し、科学成果までに何が残るのかを分けて読みたい。

初画像が確かめた三つの動作

初期運用では、衛星を目的の天域へ向け、主カメラで撮像し、得たデータを地上へ送る一連の流れを実施した。研究チームは、衛星システムと観測装置が所定の性能を発揮し、定常的な天文観測が可能だと確認したとしている。つまり、姿勢を保つ、光を記録する、画像を持ち帰るという三つがつながった。

公開例には、はくちょう座ループ、干潟星雲、北アメリカ星雲、背景放射観測に適したうしかい座領域がある。副カメラが相模原局との通信中に撮った地球像も、地上局へ向く姿勢が安定していたことの確認に使われた。九州工業大学は、天体画像について見やすいよう明るさとコントラストを調整したと明記している。掲載画像の色や明瞭さを、そのまま定量的な測定結果と受け取るべきではない。

同大は、地上望遠鏡なら数時間の露光が必要となる鮮明な画像を1分の露光で得たとも説明する。ただし、これは大気の外から観測する今回の装置の性能を示すチームの比較であり、あらゆる地上望遠鏡より優れているという意味ではない。初画像の役割は、宇宙の謎への答えより、観測系が働くことの実証にある。

35mmの小口径と広い視野

VERTECSは、3Uのバス部と3Uの観測部を合わせた6U衛星だ。観測部には口径35mmの屈折望遠鏡、四つのバンドパスフィルター、CMOSセンサーを収めた。1バンドの視野は約3度×3度で、九州工業大学は1回に満月およそ40個分の広さを観測できると説明している。

35mmという数字だけを見ると、天文観測には小さく感じる。だが、狙うのは一点の暗い星を大きく写すことではなく、空に薄く広がる表面輝度だ。JAXAは、小口径でも広い視野の平均を取ることで統計精度を高められるため、宇宙背景放射は超小型衛星を生かしやすいテーマだと説明する。「大きな望遠鏡ほど常に有利」ではなく、測る対象に合わせて口径と視野を組み合わせた設計と見る方が正確だ。

未知の光を取り出すには引き算が要る

宇宙背景放射は、個々の天体として分けられないものも含め、全天に広がって銀河系外から届く光の総体を指す。既知の暗い銀河の光を足し合わせた銀河積算光だけでは、近赤外域で測られた明るさを十分に説明できないとされる。余分な成分の候補には、銀河のハローを漂う星の光と、宇宙初期の天体の光がある。両者は近赤外では似ていても、可視光では波長による変化が異なるため、4バンド観測で起源を絞り込める可能性がある。

ただし、衛星が写す空には目的の光だけでなく、太陽系内の黄道光や銀河系内の光も重なる。計画は、多数の方向を4色で測り、これら前景成分をモデルで推定して差し引き、最後に銀河系外の成分を抽出するものだ。うしかい座の暗い領域を撮れたことは入口であり、仮説の判定には観測の蓄積、較正、前景モデル、不確かさの評価が要る。

次の発表で確かめたいこと

チームは今後約1年のノミナル運用で、ほぼ全天にわたる多数の方向を観測する計画を示している。日本の光赤外天文学コミュニティーにとっては、2011年に運用を終えた赤外線天文衛星「あかり」以来となる、宇宙からの天文観測データ提供の場でもある。「あかり」の赤外線データと照合できれば、可視から赤外までの波長依存性を検討しやすくなる。

これから成果発表を読む際は、美しい画像だけでなく、どの天域を何回測ったか、前景光をどう除いたか、明るさの不確かさをどこまで示したか、二つの候補モデルをどの程度絞れたかを確認したい。初画像は成功への重要な一歩だが、観測開始と謎の解決の間には、地道な測定と引き算が残っている。

編集部注。 本稿は2026年9月4日06:47 UTC時点のJAXA宇宙科学研究所、九州工業大学、VERTECSプロジェクト等の公表資料に基づきます。定常観測期間、観測範囲、科学成果は今後の衛星状態、較正、データ解析によって変わり得ます。

出典

  1. JAXA宇宙科学研究所|宇宙可視光背景放射観測用の超小型衛星「VERTECS」、いざ定常観測運用へ(2026年9月4日)
  2. 九州工業大学|超小型天文衛星「VERTECS」初期運用を完了し、本格観測を開始(2026年9月4日)
  3. VERTECSプロジェクト|公式ミッションサイト(2026年9月4日確認)
  4. JAXA|H3ロケット6号機(30形態試験機)の打上げ結果(2026年6月12日)
  5. 九州工業大学|超小型衛星「VERTECS」の軌道投入・運用地上局との通信に成功(2026年6月17日)
  6. Small Satellite Conference|VERTECS: 6U CubeSat Mission to Study Star-Formation History(2024年、DOI: 10.26077/w60z-2q16)

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Sona Newsの日本版シニアエディター、加藤 健司
執筆
加藤 健司
日本版シニアエディター

加藤健司はSona News日本版を担当し、国際関係、アジア経済、安全保障、テクノロジーを、検証可能な文脈と実用性を重視して伝えます。

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